遠藤彩見の「給食のおにいさん」という本を読んで
遠藤彩見の「給食のおにいさん」という本は、高いプライドと実力を持つシェフが、小学校の臨時給食調理員になり、様々なトラブルとぶつかりながら、自分を成長させ、美味しい給食を児童に届ける楽しくて美味しいちょっとスパイスの効いた物語です。
給食のおにいさん(浪人) [ 遠藤彩見 ] |
調理師を目指し、上京して10年。数々の賞を受賞し、有名な店を渡り歩き、ル・コルトンブルーのパリ校に留学するなど、
輝かしい実績を持つ佐々目宗が、次の就職先に選んだのは、小学校の学校給食の調理員。
給食のおにいさんだったのです。
戸惑うおにいさん
輝かしい実績を持ち、確かな実力を持ち、常に努力を続けてきたにも関わらず、どこの職場の仲間たちとも衝突してしまい、働きの場を失ってしまった佐々目。
今度の給食室でも、自分ほどの人間が働く場ではないと、自分の実力を認めさせようと動いた結果、給食を残す生徒が多くなり空回りをしてしまいます。
今までの常識が通用しない給食室の勤務は、佐々目にとって驚きの連続であり、戸惑うことばかりでした。
今まで評価を得ていたのは大人向けの見栄えのする目新しいものばかり。
給食という様々な制約があるなか、子供向けの給食に今までにない難しさを感じ始めてきました。
それでも佐々目のみんなに美味しいと言ってもらいたいという強い気持ちは変わらず、少しずつ周りの協力も得られながら、学校給食というものに向き合っていきます。
児童と話すおにいさん
給食勤務を続けるうちに、いろいろな生徒と関わる佐々目。給食の残りのパンをもらいに来る児童、陽と話すようになります。
ずっと前から陽を気にかけていた学校栄養職員の毛利と共に、学校給食の重要性、好き嫌いをせずにきちんと食べることの大切さを子供たちに伝えるために、様々な努力をしていきます。
はじめは、口うるさくうっとうしく感じていた毛利とも協力し、給食委員との劇やふれあい給食、おみくじハンバーグなど、様々なことを成功させていきます。
子供たちのいろいろな事情に食で解決法を見出したり、毛利が給食に凄まじい情熱を捧げるわけなどが分かるようになってきます。
佐々目自身も少しずつ給食にやりがいを感じ始めてきたのでした。
迷うおにいさん
学校給食にやりがいを見出し始めた佐々目でしたが、シェフ給食という企画でかつての同僚と再会し、華々しい活躍を目にし迷い始めてしまいます。
自分はこんなところで何をやっているのだろう、せっかく高めた技術や腕をこんなところに埋もれさせて良いのか、自分だって彼女のようにもう一度輝けるんじゃないのか。
しかし、それでも給食の重要性、難しさをかつての同僚に話すうちに給食調理員という仕事に誇りを持ち始めている自分に気づくのでした。
臨時給食調理員の期間も後わずかになった頃、自分の夢のために退職するか、続けるかで佐々目は迷ってしまいます。
そんな中、ネグレストという問題を抱えていた陽の転校が決まり、思い出作りのために学校給食コンテストに出場することになりました。
モンスターチャイルドと言われていた瑠美も加わり、コンテストのための特訓が始まりました。
結果は負けではあったがその中で得られた事は多く、瑠美の問題も陽の問題も少しずつ解決の方向になってきました。
刻々と迫る調理員の期限。毛利から突き放されたようで心が揺れる佐々目。
結局、自分の夢を諦めることはしないけれど、また一年、給食の調理員として働くことを決めた佐々目でした。
自分のプライドではなく、食べる人のことを考え、調理することを理解し始めた彼は、まだまだ給食のおにいさんとして、料理人として成長し、頑張ってくれます。
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