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伊坂幸太郎オーデュポンの祈りのあらすじと感想!孤島が舞台のミステリー

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伊坂幸太郎のオーデュポンの祈りのあらすじと感想、一風変わったミステリー

2003年に「重力ピエロ」が直木賞候補となり一躍有名となった井坂幸太郎、その後も2004年「チルドレン」「グラスホッパー」、2005年「死神の精度」、2006年「砂漠」と精力的に執筆し、作品はその度に話題になる人気作家です。


2008年にはついに「ゴールデンスランバー」で直木賞受賞も果たしましたね。そんな伊坂幸太郎のデビュー作が「オーデュポンの祈り」です。

実は私にとっての伊坂幸太郎デビューも、この「オーデュポンの祈り」だったのですが、そのリアリティとファンタジーの世界が入り混ざったような世界観。

ありそうで、だけどあり得ない、まさに夢の中を漂っているような不思議な感覚に引き込まれてしまったのです。

人の言葉を話し、未来を見通すかかしに、嘘しか言わない画家、殺人を許された男、主人公の周りで次々に起こる奇妙な「現実」、物語はミステリーの形式をしていますが、アンチミステリー。

殺人が起こり、主人公がその謎を追っていくのですが、ストーリーの目的は殺人者やその手口の解明ではなく、もっと深いところにあるのでしょう。

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ストーリーにちりばめられたシュールで洒落たセリフ

「目が、目が疲れたんです」そう言って5年間勤めた会社を辞めた主人公、伊藤。それに対する伊藤の上司の返答は「伊藤、お前いくつだ?」

シリアスなシチュエーションで繰り広げられる、一件真面目で少しずれているシュールな会話がこの作品の一つの魅力となっています。

舞台である奇妙な孤島「荻島」に住む人々のセリフ、伊藤との会話がいちいち全て洒落ていて登場人物の魅力を引き立ててくれます。

個人的にとても魅力を感じたのは、島の裁判人のような存在の、唯一殺人を許された「桜」。
美しくて冷酷、ルールに反するものには容赦なく拳銃を向けます。

「おまえ、踏んでいる」という理由だけで悪のかたまりである城山を射殺する瞬間は、鳥肌がたちます。

話のところどころに散りばめられた、きらりと光るウィットに富んだ、素敵なセリフがこの作品の魅力を一層と際立てています。

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萩島に欠けているものとは?

作品の冒頭で「人間を形成するのに最も大切なものは何か」という小山田の問いに対して「音楽とのふれあい」と答えた伊藤。ここから既に伏線は張り巡らされていたのでしょう。

「荻島には何かが欠けている、それは何か」という問いがこの作品の本質的なテーマとなっています。

あまりにも何度も繰り返されるので、「かけているもの」がどんなに重要なものなのか、読者は想像力を掻き立てられます。

様々なものに引き寄せられて静がアルトサックスを持って荻島にやってきて、島に「音楽」もたらすとき、島に欠けていたものが「音楽」だったことが判明します。

この事実を知ったとき、そんなことか、と拍子抜けする反面、何だか妙に納得させられたのです。

「音楽」とは空気や水、食べ物などのように、生きていくために必要なものではありません。

ただ、音楽はそれが音楽と認識されるはるか昔から存在していたものであり、人間の本質、アイデンティティともなり得るものなのです。

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