スポンサーリンク

太宰治「人間失格」のあらすじと感想!高校生向け読書感想文におすすめ!


太宰治「人間失格」の読書感想文

太宰治「人間失格」のあらすじ

厳格な議員の父を持つ主人公、大庭葉蔵は幼いころから人間の営み、幸せが分らぬという罪の意識を抱いていました。

そこで道化を演じることで「お茶目」という性格を獲得し生きていこうとしますが、中学校の同級生である竹一にその演技を見破られます。

竹一は葉蔵の本性を見破るとともに「女に惚れられる」将来も予言します。葉蔵は竹一にだけは自分の中の「化け物」をさらけ出すことができたのでした。

その後、葉蔵は高校へ進学したものの不登校になり画塾へ通い、そこで悪友・堀木正雄に出会い道化者の同類として受け入れます。

堀木と夜な夜な酒遊びを繰り返すうちにカフェの女給である貧しい女ツネ子と恋仲になりますが、入水事件を起こしてツネ子は死に葉蔵だけが助かりました。

事件ののち葉蔵は起訴猶予になりますが父に勘当され高校も退学となり、父の友人であったヒラメの家で漫画家をしながら暮らします。

外出を禁じられる窮屈な生活を送っていた中、ヒラメに将来の展望について詰問されたため葉蔵は家出し堀木の家に向いました。

そこで出会ったシングルマザーのシヅ子の家に転がり込み娘のシゲ子のことを可愛がっていましたが、本当のお父さんが欲しいと神様にお祈りしているという言葉を聞いてまたしても家出してしまいます。

アルコール中毒になっていく葉蔵を止めたのは17,8歳の処女ヨシ子でした。二人はやがて結婚しますがヨシ子は炊事中、葉蔵の仕事関係者の男に犯されてしまいます。

「何もしないから」という男の言葉を信じたヨシ子の「無垢の信頼心」が「黄色い汚水」に代わってしまい葉蔵は再び酒・薬物中毒に、ついに「狂人」として入院させられます。

退院後、父が死んだことを聞かされ自分の苦悩の原因は父の厳格さにあったのではなかろうかと気づきます。

田舎で老女とともに療養生活を送り、不幸も幸福もない平凡な時を過ごすのでした。

スポンサーリンク

太宰治「人間失格」を読んだ感想

この作品の主人公・葉蔵は果たして加害者でしょうか、それとも被害者でしょうか。確かに知り合った女を死に至らせたり浮気性で金遣いが荒く、酒癖も悪い。

しかし「第一の手記」の幼年時代からは「悪」の片鱗は見て取れません。実用的に回っている世間を不思議に思い、ファンタジーと思い込むのは子供の常ですし「隣人の苦しみの性質、程度が、まるで見当つかない」のは大人だってそうでしょう。

むしろ世間から道化という役を得て精一杯演じようという努力は大したものだとも言えます。「はしがき」にあるように「イヤな薄気味悪い」ものだったとしても。

退院後に葉蔵自身が気づいたように、もし葉蔵に罪があるとするならそれは彼の父にあるのではないでしょうか。

作品中に父親はほとんど登場しませんが、田舎から出世して議員になったということは結構な理想や正義感を持った人物であったと思われます。

そして葉蔵の手記からは、意図的に父についての言及を避けていると捉えることもできます。葉蔵は正式な婚姻関係を結ばず、結婚しても子は持たない。

それは「父親」になることを避けていたとも言えるでしょう。シゲ子の「本当のお父ちゃんがほしいの」という言葉で葉蔵は自分は真の父親にはなれないことを改めて意識させます。

逆に父親になってしまったらシゲ子とシヅ子の幸福を壊してしまうのではという恐怖から、家出して二度と戻らなくなったのだと思います。
堀木正雄、葉蔵にとって毒にも薬にもなるこの男は「世間とは個人である」という気付きを与えます。

その場その場の闘いをいかに生き残るか、その一本勝負に頼るほかないと葉蔵は悟り、幼少のころから悩まされていた「人間の営みがわからない」という疑問に答えが見え始めます。

堀木は罪の対義語は何かというクイズに対して「法律、あるいは善良なる市民」と簡単に答えますが、両者とも「世間」から生まれるものです。

しかし葉蔵はそうした善悪概念はけっきょく人間が作ったものだとして完全性を認めることができません。

その「二者選一の力」の欠如こそが彼の苦痛、恥の多い人生の源泉だったのであり、幸福も不幸も感情もない、「ただ、一さいは過ぎて行」くようにして生きるしかなかった。

「トラ(悲劇)」でもあり「コメ(喜劇)」でもある、男の一生を描いた良作だと思います。

コメント